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大阪地方裁判所 昭和51年(ワ)3772号 判決

原告

永野暎子

被告

トナミ運輸株式会社

ほか一名

主文

被告らは各自、原告に対し、金三八六万八〇五七円およびこれにつき被告飯田重和は昭和五一年八月一五日から、被告トナミ運輸株式会社は同年同月一八日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の負担とし、その二を被告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告らは各自、原告に対し、金一三〇〇万円およびこれに対する訴状送達の翌日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二請求原因

一  事故の発生

昭和四八年七月二七日午前二時五〇分頃、大阪市大淀区中津南通四丁目九番地先路上において、被告トナミ運輸株式会社(以下被告会社という)が所有し、被告飯田の運転に係る大型貨物自動車(大阪一あ八五八七号)と、訴外米満末雄が所有し、かつ運転する普通乗用自動車(神戸五五ひ一四四号)とが衝突し、右米満車に同乗していた原告は、右事故により前額部、右頬部、下顎部多発性挫創等の傷害を負つた。

二  被告らの責任原因

前記事故は被告飯田、訴外米満において、前方注視義務、徐行義務、安全運転義務を怠つたために発生したものであるから、被告飯田は民法七〇九条により、被告会社は被告飯田運転車両の保有者であり、本件事故当時自己のために右自働車を進行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法三条により、本件事故による原告の損害を賠償する責任がある。

三  損害

1  受傷、治療経過等

(一) 傷害

前額部・右頬部・下顎部(顔面)多発性挫創、右肩挫創、左膝部挫創、右大腿部打撲挫傷、脳震盪、胸部打撲、血胸、頸部捻挫

(二) 治療経過

昭和四八年七月二八日から昭和四九年一二月二六日まで行岡病院に入院、昭和五〇年一月九日から昭和五一年一月三一日までの間、一週間に一度の割合で同病院に通院して加療をうけた。

(三) 後遺症

顔面醜状、右前腕尺側中下三分の一より末梢のしびれ、右小、薬、中指の自動運動不能(昭和五一年二月二三日症状固定)

2  慰藉料 金九八六万円

入通院治療中を対象に金一五六万円(入院一年六月、通院一年一月)後遺障害を対象として金八三六万円(原告は顔面に多数の硝子小破片を内包した切傷痕を残した顔面醜状痕を後遺しており、その程度は自賠法施行令別表後遺障害第七級第一二号に該当し、さらに右前腕尺側中下三分の一より抹梢の麻痺および右中、小、薬指の自動運動不能の障害を後遺しており、その程度は同表第七級第九号に該当するものと考える)

3  休業損害 金一四七万八〇〇円

原告は本件事故当時、ホステスの職にあり一か月金一二万五〇〇〇円の収入(一月に二五日間稼働し、日収は金五〇〇〇円)を得ていたところ、受傷当日の昭和四八年七月二八日から症状固定の昭和五一年二月二三日までの休業損害は少くとも金三七五万円となるが、このうち金二二七万九二〇〇円は被告会社より受領済であるので残額一四七万八〇〇円。

4  将来の逸失利益

(一) 原告は本件事故による負傷がなかつた場合には、今後一〇年の間はなおホステスとして稼働し得たところ、前記後遺障害のためその職業に就くことは全く不可能となつたので、従来通り月一二万五〇〇〇円の収入を得、生活費を五万円とみてホフマン式によりその損害を算出すると金四七六万七〇〇〇円となる。

(二) 原告はさらにその後の一〇年間にあつては就労は可能であるが、その場合でも前記後遺障害のため労働能力の七〇%を喪失するものと考えられるので、一か月の収入を七万円、生活費を二万円とみてホフマン式によりその損害を算出すると金三三三万六九〇〇円となる。

四  損害の填補

原告は自賠責保険金五〇〇万円の支払を受けた。

五  よつて右損害のうち請求の趣旨記載のとおりの判決(遅延損害金は民法所定の年五分の割合による。)を求める。

第三請求原因に対する被告らの答弁

第一項の事実については、原告の負傷の点のみ不知。その余は認める。

第二項の事実については、被告会社が被告飯田運転車両の運行供用者であることおよび被告飯田にも一方通行道路を逆進行した点に過失があることは認めるが、被告飯田および被告会社に損害賠償責任があるとの点は争う。

第三項の事実は不知。

第四項の事実は認める。

第四被告らの主張

一  損害の填補

本件事故による原告の損害に対しては、原告が自認する自賠責保険金五〇〇万円の外に、被告らから原告に対し金四四三万四七二八円を支払つておる。

二  示談成立

本件事故に関しては、昭和五一年一月三〇日に当事者間で示談が成立しておるものである。原告は示談内容を充分検討したうえで示談書に自ら署名し、且つ印鑑証明の印鑑を押捺しているもので、完全に有効に示談は成立した。

またその示談内容についても賠償金額として極めて正当なものである。即ち、被告は治療費二〇二万三六九〇円、付添費三万五〇〇〇円を支払い、休業補償についても原告の症状固定までの全期間にわたり、原告の要求どおり(要求額は乙第六号証のとおり)の休業損害(二三二万三九八八円)を支払つた。この外に、原告から後遺症についての保険金を被告車と共同加害車両の米満車の両方の自賠責保険に被害者請求することで本件示談が成立したものである。因みに後遺障害の程度は六級程度(顔面醜状七級と他の後遺障害との併合で六級程度)と予想しており、この場合、後遺障害(六級)の慰藉料が保険金の二五〇万円と考え、指の後遺障害(一〇級)による逸失利益を労働能力喪失率二七%、右能力喪失期間を一〇年とみても(通常は六~七年と考えられる)、その損害はつぎのとおり二五〇万円以内であるから、結局原告が受領した自賠責保険金五〇〇万円の限度で填補できることとなる。

(九〇万二四〇〇円×〇・二七×七・九四五(一〇年のホフマン式係数)=一九三万五七八三円)

右損害費目中には、入通院治療中の慰藉料が含まれていないが、これについては、被告らと原告の示談までの経緯では共同加害者の米満から支払を受けてもらう旨の話をしていた。

さらに本件事案は、原告において訴外米満運転車に同乗するにあたり、米満が飲酒しているのを承知しており、しかも深夜の好意同乗者でもあるから、原告の損害額算定にあつて相当程度減額を考慮されるべきものであつた。

第五被告らの主張に対する原告の反論

一  被告ら主張の昭和五一年一月三〇日に示談が成立しているとの事実は否認する。

二  原告において被告会社から休業補償の一部として金員を受領していることはさきのとおりであるが、その金額については被告の主張額を争う。

三  示談書について。

被告会社大阪北支店安全係長である訴外大国昭義から昭和五一年一月二一日に原告に対し電話で、保険金を請求するのに原告の印鑑証明が必要であるから交付を受けておいてくれるようにとの申入れがあつたので、原告は同日印鑑証明の交付を受けた。

翌日大国から印鑑証明を頂きに行くとの電話があり、同日午後同人は原告方に来たが、原告としては母親との二人暮しで、このような事には無知でもあつたので、近所で知合いの訴外堀部健次郎に立会つてもらうこととし、その席上、大国は保険金請求に必要な書類を見せて「この書類は保険金の請求に使用するものであり、保険金がおりてもそれで終りということではない。示談の書類ではない。」と言明したので、立会つた訴外堀部も安心して原告に署名押印するよう奨めた。

そこで原告は訴外堀部の奨めもあり、大国の右説明を信じ、保険金請求に必要な書類という認識のみを以て、大国の指示する個所に署名し、大国において原告の実印を代行して押捺したものである。

ところが、同年二月になつて原告に対し「示談書」を送付してきたので警き厳重抗議した次第である。

証拠〔略〕

理由

一  事故の発生

請求原因一の事実は、原告負傷の点を除いては当事者間に争いがない。

二  責任原因

請求原因二の事実中、被告会社が被告飯田運転車両の運行供用者であることは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第二号証の三、同号証の五ないし九、被告飯田重和本人尋問の結果によると、つぎの事実が認められる。即ち、事故発生現場道路は東西に通ずる二車線(各車線の幅員三・五メートル宛)の西行一方通行道路であるところ、被告飯田は大型貨物自動車(大阪一あ八五八七)を運転進行中、若しかしたら自車が西行一方通行指定の道路を逆行(東進)しているのではないかと思つた後、自車走行車線内の前方約六四メートル地点をかなりの速度で西進(対面進行)してくる車両を認め、正面衝突しわしないかとの危険を懸念しながらも、相手車において自車の存在に気づき車線変更して避譲してくれるであろうとの考えから単に停止措置をとつたに止まつたため、右対面車(訴外米満運転、原告同乗)に気づいた地点より約二一メートル余進行した所で停車したものの、自車の存在に気づくのが遅れた訴外米満の運転していた普通乗用自動車と正面衝突してしまい、同車に同乗していた原告にも負傷させた。

右認定の事実によれば、被告飯田において、前記米満運転車を発見した時点で、停車措置をとるに止まらず、前照燈を点滅させ、警音器を吹鳴する等して同車運転手の注意を喚起し、もつて衝突事故の発生を未然に防止するよう努めるべき注意義務があるのに、これらの措置を尽さず、安易に自車において停止措置をとれば、相手車運転手の方でも自車に気づいてそれなりの避譲措置をとつてくれるものと軽信した過失により(もつとも、被告飯田において自己に過失の存すること自体は争わないところではある)本件事故が発生したことは明らかである。そうすると、被告会社は自動車損害賠償保障法三条、被告飯田は民法七〇九条により、いずれも本件事故で原告が被つた損害を賠償する責任がある。

三  損害

1  受傷、治療経過等

成立に争いのない甲第二ないし甲第五号証および原告本人尋問の結果によれば、原告は本件正面衝突事故により、請求原因三1の(一)のような傷に加えて右第五中手指関節亜脱臼、右尺骨神経麻痺の傷害をうけ、顔面に異物(ガラス破片)混入の事実を認めることができる。

さらに、成立に争いのない甲第五号証、乙第七号証、原告本人尋問の結果およびこれと弁論の全趣旨から真正に成立したものと認め得る乙第三号証の二一ないし二四、一七、一八、一四、一三、一九、二〇、一五、九ないし一二、五ないし八、一、三、四によると、原告は前記受傷治療のため、その主張のとおり(五一八日間)入院の後、昭和五〇年一月九日より昭和五一年二月一八日頃まで同病院に通院したこと、その結果遅くとも昭和五一年二月二三日つぎのような状態で症状が固定したとの診断が前記行岡病院の安田弘医師によりなされたが、その後遺障害内容は顔面醜状痕、右前腕尺側中下三分の一より末梢のしびれ、右小、薬、中指の自動運動不能(他動的には各指とも正常域に保たれているが、実用性は認められない)との事実を認定できる。

2  休業損害

弁論の全趣旨によりその成立を認め得る乙第六号証および原告本人尋問の結果によれば、原告は本件事故当時三六歳で、大阪市北区曽根崎上二丁目所在のGOA(ゴア)というバーのホステスとして稼働し、少なくとも一日二五二九円を下らない収入を得ていたものであるところ、本件事故による負傷のため昭和四八年七月二七日(事故当日)から昭和五一年二月二三日までの間(九四二日)全く休職を余儀なくされたので、この間合計二三八万二三一八円の収入を失つたことが認められる。原告本人尋問の結果中には月収一二~一三万円はあつたとの供述があるがたやすく採用できず、他に右認定に反する格別の証拠もない。

3  将来の逸失利益

原告の従来の職業はホステス業であるが、前記後遺障害による将来の逸失利益を予測認定するにあたつては、同人がもともとこの職を継続し得るのは四〇歳までとみ、その後にあつては家事労働に専従する主婦に準じた収入を得るものとみたうえ、これについては症状固定(後遺障害が具現した)当時の賃金センサスによる原告と同年代の全国女子労働者の取得する平均賃金相当額(産業計、企業規模計、学歴計)により算定するのが相当である。ところで、原告本人尋問の結果によれば、原告は右手で物を提げることができず、最早や以前の職に就くことはできないものの、さりとて就労しない訳にもいかないが、人前に顔を出すのが嫌で未だ就労していないことが認められ、これに前記認定の受傷ならびに後遺障害の部位程度、労働基準監督局長通牒昭和三二、七、二、基発第五五一号による「労働能力喪失率」、年齢、その他諸般の事情を綜合考慮すると、同人は右後遺障害のため、昭和五一年二月二日(当時原告は三八歳)から二年間は本来なし得た職業に照らし、その労働能力を五〇%、その後の一八年間にあつては平均的に少なくともその労働能力を二五%は喪失するものと認められるから、これによる原告の将来の逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、四八五万四七二七円となる。

算式

初めの二年分

年収 九二万八〇〇円×〇・五×一・八六一四=八五万六九八八円

後の一八年分

年収 一三六万四〇〇円×〇・二五×(一三・六一六〇-一、八六一四)=三九九万七七三九円

4  慰藉料

本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、治療の経過、後遺障害の内容程度(女子の外貌に著しい醜状を残し、右手第三、四、五指の用廃の結果、自賠責保険後遺障害等級併合繰上げにより第六級相当程度)、年齢、その他諸般の事情を考えあわせると、原告の慰藉料額は四〇〇万円とするのが相当であると認められる。

四  示談

成立に争いのない甲第六、第八号証、証人堀部健次郎、同永野富士枝の各証言に、原告本人尋問の結果を綜合すると、つぎの事実が認められる。(示談書なる書面に原告が署名し、自己の印鑑登録証明を交付したいきさつ)まず、昭和五一年一月初旬頃、被告会社の渉外担当係である大国昭義から原告に「保険金を請求するのに必要であるから、印鑑登録証明をとつておいて欲しい」旨の電話連絡があつたが、原告が数日その侭にしていたところ、再び連絡があり、未だ用意していない旨返事したところ、大国の様子が自分を信用しないのかとの意向にうかがえたので、原告は母の永野富士枝に自分の印鑑登録証明をとつてきておいてくれるよう頼んだ。この頼みをうけた母富士枝としても勝手がわからないので、時折相談相手になつてもらつていた近所の堀部健次郎宅を訪れ、同人に暎子(原告)が被告会社の方から印鑑登録証明をとつておいて欲しいと言われているが、どうしたらいいかを尋ねたところ、相談をうけた堀部としても必要とする理由が判らなかつたので、格別の返事をしないでいたところ、富士枝の方でこれが交付をうけてきた。その後、昭和五一年一月三〇日に至り、再び富士枝が堀部方に来て「今被告会社の人が来ておるが、何分女だけで書類の事もよく判らないので立会つて欲しい」旨の頼みをうけた堀部は、これに応じ原告方に行つたところ、大国昭義が来ており、同人の説明では来訪の目的は保険金の請求をするのに被害者名でする関係上、被害者である原告の印をもらいに来たとのことであり、一方原告からは書類が沢山あるので目を通して欲しいと言われ、それらを見たところ、その書類中には「示談書」なる書面が三部入つており、これについても大国は保険金請求に必要なので、この事故がこれで解決したというものではないから捺印してくれるように話していたので、堀部としても当時まだ印刷部分以外は空白になつていた示談書に捺印するというのも変だが、大国の言う如く保険金請求に必要というのであれば仕方がなかろうと考え、結局原告にこれに捺印するよう奨めたところ、原告もこれに従い、関係書類に署名捺印し、あわせて予め用意していた印鑑登録証明をも大国に手渡した。

右認定に反する証人大国昭義の証言中、昭和五一年一月三〇日に示談の内容について大体の筋は言つたと思う。示談書の内容は示談条件を含め原告と話合い一切を記入したうえ、原告もこれに眼を通したし、富士枝の頼みで原告宅に来た堀部健次郎も何回も読んでこの内容だつたらいいだろうと原告に言つたので、原告が署名捺印し、同人の印鑑登録証明書も渡してくれた。示談書のうち一通は当日原告宅に置いてきた。堀部からも示談書を何に使うのか念を押されたことはないし、自分から保険金の請求に必要である旨話したこともない。示談書を後日他の書類と一諸に原告に宛て送つたということはない。との証言部分は、成立に争いのない甲第六号証、証人大国昭義の証言により成立を認め得る甲第七号証の一、二、原告本人尋問の結果中の自分の方で持つている示談書なる書面(甲第八号証として提出のもの)は、昭和五一年三月三日以降に、東京海上火災保険株式会社大阪支店損害査定部自動車第三課(自賠)塩谷の捺印のある原告永野暎子からの「保険金請求書類の預り書」(甲第六号証として提出のもの)および同和火災海上保険株式会社本店保険相談センター所長代理原田稲代の名刺(甲第七号証の一、二として提出のもの)と一諸に送られてきたものである。それで自分は覚えのない示談書が入つていたので、すぐ大国に電話すると、大国は示談が済んでいるのにと言つたので、かつとなつていろいろ言つた。自分としては示談が成立したことなど考えられない。五一年一月三〇日にできたというのなら、その場で示談書を自分に渡す筈なのに、渡されてないし、堀部が来てくれてからも示談の話はなかつた。自分は一回しか署名しておらず、その署名をした書類は保険金の請求書であつたのに示談書に署名してあるのが不思議でならない。自分は示談書であると思つて署名したのではないとの供述、および証人大国昭義の証言中の甲第六号証、甲第七号証の一、二は自分が原告宛に郵送したと思う。この書類を送つた直後原告から示談のことで電話があり、一方的に喋つて電話を切つた。手紙も送られてきて示談のことで厳しい文句が書いてあつたと記憶しているとの証言部分に対比して検討すると容易に信用し得ないし、他にこれを左右するに足る証拠はない。

右認定事実によると、未だ被告らが主張する如く、原告が前記示談書なる書面の内容を理解し、そこに記載されてある示談条件で示談したものとは認め難く、被告らの示談成立の抗弁は理由がない。

五  損害の填補

請求原因四の事実は当事者間に争いがなく、さらに成立に争いのない甲第九号証、乙第四号証の一ないし一三によると、被告会社から原告に対し、本訴請求にかかる損害分(休業補償)として二三六万八九八八円を支払つておる事実(もつとも二二七万九二〇〇円の限度においては当事者間に争いがない)が認められる。

よつて原告の前記損害額から右填補分七三六万八九八八円を差引くと、残損害額は三八六万八〇五七円となる。(因みに被告ら主張の支払金のうち、前記以外のものはいずれも本訴請求外のものに対する支払と認められる。)

六  結論

よつて被告らは各自、原告に対し、金三八六万八〇五七円およびこれに対し、被告飯田は昭和五一年八月一五日から、被告会社は同年同月一八日から(いずれも被告らに訴状送達の日の翌日)各支払済まで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で正当であるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を適用し、仮執行宣言の申立については相当でないから却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 相瑞一雄)

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